
【前回までのあらすじ】
学生が来なくなった大学図書館の復活を命じられた「僕」は、資金・マンパワー不足の中、司書の杏ちゃんらと共に「理想の図書館」を考えるワークショップを開催した。(フィクションです)
図書館の地下で開催されたワークショップは、暗闇の中で開催され、大いに盛り上がっていた。
「そろそろ明かりがつくと思う」
司書の赤毛の杏ちゃんがそう言うと、蛍光灯がチカチカと鳴り正常に戻った。
「ほらね」
おおよそ1時間経つと治るらしい。完全に壊れると施設部も配電盤を取り換える予定らしいが、なんとかギリギリの状態を保っているので手当をしない。まさに、今の図書館そのものだ。
「おっ、皆さんのアイデアがまとまりましたね」
僕は明るく照らされたテーブルの上の2枚の模造紙を指さした。2つのグループがそれぞれに完成させた「理想の図書館」が並んでいた。
「ホッホー!、いいじゃないですか!」
僕の言葉に杏ちゃんが反応した。
「なんか、いい感じですね。こうして制作物にすると、ちょっとお粗末に見えますが、自分たちが考えていたことがわかりますね」
「でしょう~。ホ~ホッホ~。それでは、グループごとに発表してもらいましょう」
最初のグループは、新人が発表するようだ。7年ぶりに新卒採用として入ってきた女性だ。新型コロナウイルスは下火になったものの、まだ歓迎会などの飲食は大学の規定で解禁されてなかったので、打ち解けて話したこともないし、マスクの下の彼女の顔も僕は見たことがなかった。大柄の彼女は自己紹介をした。
「本野栞と書いて、ホンノシオリと読みます。読みかけの本の間に挟む栞のシオリです。いつも私は挟まれているけど、全然痩せません」
どっと笑いが起こった。鉄板の自己紹介ネタのようである。僕も手を叩いて喜んだ。
「ホッホホ~、シオリちゃん、面白い」
「フクロウ館長、私、本を読むことと歌うことが好きなんです」
「ホ~」
「歌いながらプレゼンしていいですか?」
とマスクを外した。丸い目と大きな口の笑顔。僕は杏ちゃんと目を合わせた。杏ちゃんが目を丸くして何度も頷く。
「いいよ、いいよ、歌って、ホッホホ~」
シオリちゃんは咳払いを一つして、ホワイトボードの前に立った。「理想の図書館」と書かれた模造紙が貼ってある。みんなの視線がシオリちゃんに集まると、ひとつ大きく息を吸って、彼女はゆっくりと声帯を震わせた。
私の名前は、ホンノシオリ~♪
ゆっくりとしたリズム、低音の音が地下室に響いた。
シオリは、目印♪ 私たちが進む印。私たちの図書館は、どこに進むのか~♬
声は徐々に大きくなってゆく。
理想の図書館、それは、癒しの場であり、人がつながってゆく所♪
伸びのある声が天井から突き抜けてゆく。アップテンポに変わり、杏ちゃんが手拍子を打ち始め、皆が続く。
居心地のいい図書館、人との出会いの図書館、本があり、音楽があり、カフェもある理想の図書館♪
続いてシオリちゃんは、ふっくらとした足に短い靴下の先の白い革靴で床を踏み、音を鳴らす。タップダンスのように床を鳴らす。手拍子と同期し、思わず皆も歌い出す。合唱だ。
図書館!ラララ~私たちがあなたに本を届ける♪
ハーモニーが生まれ、地下室は一体化してゆく。
図書館!ラララ~私たちがあなたに幸せを届ける♪それが~、ラララ~理想の図書館♪
シオリの歌のプレゼンは最高潮に達し、僕は涙をながしながら、「ホ~ッホホ、ブラボ~! ブラボ~!最高の図書館だ!」と叫んでいた。
(この物語はフィクションです。つづく)
【フクロウ館長おすすめ本】

面白い! シリーズで売れている本ですね。もうすでに舞台となった滋賀県大津市は聖地巡りが定番となっているようです。映画化やテレビドラマ化もされるでしょうね。大津市立図書館では、本書の予約待ちが700件を超えて、最後の人が手に取るまで2年以上かかるらしい(笑)。すかっと気持ちよくなる物語ですね~ホッホホ~。
【黒にゃんこ司書のつぶやき】
理想胸に ラララ 私たちは進む~♪
こんにゃちは、つられて歌いたくなった黒にゃんこ司書です。プレゼンでミュージカルをやる度胸、見習いたいものです。さて、この物語もそろそろ終盤。新人のシオリちゃんも登場し、次世代へバトンを繋いでいきます。それじゃ、またにゃ~♪