【前回までのあらすじ】
フクロウ館長の「僕」は、人が来なくなった大学図書館の改革案を、番人司書「赤毛の杏ちゃん」らと話し合うことになった。(フィクションです)
「僕は司書の皆さんから教えてもらいました。『図書館学の父』と呼ばれているランガナタンは五つの原則を示し、第五原則は『図書館は成長する有機体である』と」
話し始めた時、会議室の電気が突然消えた。会議室は地下にあるので、ほとんど光が入らない。真っ暗闇で僕は「えっ!」と声をあげたが、10名いる司書の誰も驚かなかった。
「また飛びましたね~」
杏ちゃんの声の後に、小さなライトが次々に点灯し、蛍のように動き出した。どうやら司書さんたちは電気が消えるのを予想して、各自ペンライトを持って会議室に来るようだ。
「施設部には何度か修理してもらっているんですがね、ここの電気は気まぐれで切れるんですよ」
とライトに照らされて鮮明となった赤毛を揺らしながら、杏ちゃんは僕に言った。
「フクロウ館長が言いたいのは、図書館は変わらなければならない、ということですね」
「ホッホホ~。そうです、そうなんです」
皆が笑った。真っ暗闇の中で、フクロウのように鳴く僕の低い声が森に響いたからであろう。僕は杏ちゃんのペンライトを借りて、眼鏡の自分の顔を映すと、
「本当にフクロウみたいですね」
とさらに笑い声が起こった。杏ちゃんの声が、
「そう、フクロウは夜行性で夜目が効くので、『見通しが明るい』とか、『知恵の神様』と呼ばれているから期待してますよ」
と弾んだ。僕は暗闇の中で、なんだか変な連帯感を司書たちと感じていた。若いころ、キャンプファイアーの火を囲んで語り合ったことを思い出した。暗闇に感謝しながら、僕は話し続けた。
「もし僕らにたくさんの資金があり、十分なスタッフがいて、有り余る時間があれば、どんな図書館を創るだろう?」
「夢の図書館?」
杏ちゃんが言った。
「そう。理想の図書館と言ってもいいですね」
「改革するために、理想を語る?」
「いや、それよりも、楽しく空想をめぐらす作業をしたいんですよ」
本好きの司書たちは、本を読みいろんな想いを巡らすことは好きなはずだ。図書館とは、自由な想像ができる場所なのだ。
「じゃあ、やりましょう」
杏ちゃんの張りのある声と共に、司書10名は2つのグループに分かれて作業を開始した。「理想の図書館」というお題目でのワークショップ。文化人類学者の川喜田二郎氏が発明したKJ法を用いて、アイデアを出し合う。KJ法は、小集団がアイデアを出し合う時に使われる。まずは文殊の知恵の由来の「文殊カード」に、思いつく言葉を書いていく。文殊カードは3枚綴りになっており、1人が書き込み、右に回して2人目が1人目の書いたアイデアを参考に書き込み、また右に回すという方式だ。文殊カードが暗闇の中でどんどん回される。
「やっぱり理想の図書館には猫は必要よ」
「いや、犬でしょう(笑)」
「借り放題、読み放題」
「飲み放題もつけて(笑)」
暗闇の中でライトがゆらゆらと光り、蛍が舞うようにアイデアが次から次に出てきた。次に、たくさん溜まった3枚綴りの文殊カードを切り離す作業をする。ミシン目の入ったカードは、音を立てながら切り離されてバラバラの短冊の山ができた。
「それでは、この短冊をグループごとにまとめましょう。似たような短冊は1つのグループに」
作業は順調に進んでいる。
「『猫』・『犬』・『飲み放題』は、何とまとめる?」
「『究極の図書館』は?」
「それいい!」
あちこちで、活き活きとした会話が聞こえてきた。暗闇の中で、理想の図書館の光が見えてきた。
「ホッホホ~、いいでね~いいですね~」
僕はひとりで悦に入り、ほくそ笑んだ。

(この物語はフィクションです。つづく)
【フクロウ館長おすすめ本】

世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業 | 長崎大学附属図書館 OPAC
僕は小学校から大学院まで様々な授業を受けてきた。最も印象的だった授業は?と問われると「う~~~ん」と考え込む。本書は授業をする人にも役に立つが、受ける学生にも役立つと思う。さらに、就職活動に役立つんじゃないかと思った。質問の磨き方とか、答え方とかも書いてある。大学に関わる人なら読んで損はないと思いますよ~、ホッホホ~、次回をお楽しみに。
【黒にゃんこ司書のつぶやき】
こんにゃちは、黒にゃんこ司書です。「理想の図書館」には犬や猫がマスト!の件ですが、実際にアメリカのある公共図書館には名物猫さんがいるところもあって、本も出版されています。
本物の犬猫さんは難しいですが、代わりにファミレスにいるようなロボ猫さんがいて、本を取ってきてくれたり、館内の安全を見回りしてくれたり、掃除をしてくれたら最高かも・・・。それじゃ、またにゃ~♪