<永安学長に聞いてみた!>は、浜田図書館長がインタビュアーとなり、約2年間にわたり永安学長のお考えや永安学長と学生の皆さんの交流をお届けしたシリーズでありました。今回、浜田図書館長が任期を終えるにあたり、今回のテーマで最終回とさせていただきます。
そして、テーマは、ずばり、<プラネタリーヘルスを学ぶ>です。
これまでのシリーズで、たびたび出てきた<プラネタリーヘルス>に関しては、こちらのサイトをご覧ください。
https://www.plh.nagasaki-u.ac.jp/
現在、永安学長が
<プラネタリーヘルスへの貢献、それが私たちのミッションです>
と宣言をし、その実現へ長崎大学の挑戦は続いています。
そこで、本日は、挑戦し学び続ける大学院生の皆様をお招きしまして、学長と共にお話を聞いてみたいと思います。もちろん、図書館の企画でありますので、本を通しての学びも皆様にお伝えしたいと思っております。

(左から)
浜田図書館長(崎長ライト)
森保先生(プラネタリーヘルス学環・グローバル連携機構)
エイドリアン・マハシ さん(多文化社会学研究科 博士後期課程1年)
永安学長
ヘンカー 寛子 さん(プラネタリーヘルス学環 博士後期課程3年)
田仲 菜都子 さん(総合生産科学研究科 博士前期課程1年)
【学長室は家具もプラネタリーヘルス!?】
崎長 あれ?学長室の家具が変わりましたね?
前は、ちょっとダークな感じの重みがある色の机でしたよね。
明るい色に変わっていますが・・・何かコンセプトがあるんですか?
学長 まさにね、「プラネタリーヘルス」がコンセプトなんだ。
デザイン等に詳しい先生にも色々相談して、明るい色にしようと・・・
椅子もグリーン基調にしてね。
ちょうど、今日の対談に間に合ってよかったよ。
全員 (笑)
崎長 いやいや、素晴らしいですね~。
では、机と椅子も新しくなった学長室で、
「プラネタリーヘルス」を研究テーマにしている
大学院生の皆さんと対談していきたいと思います!
早速、自己紹介をお願いします。
田仲さん はい、私は総合生産科学研究科で水産学系の研究を行っています。
研究テーマは、「長崎県の大村湾におけるクロロフィル(葉緑素)
の動態について」です。

学長 クロロフィルの動態というと、貧酸素とか・・・。
田仲さん はい、そうです!
崎長 なるほど~。後ほど、詳しくお聞きしていきたいと思います。
では、エイドリアンさん、どうぞ。
エイドリアンさん 私は、逮捕や捜査における刑事手続が
憲法上の「個人の基本的人権」に反してないかどうかについて、
ケニアでの刑事訴訟法と憲法の関わりを研究しています。
崎長 ケニアの法律は、日本の法律と随分違うんですか?

エイドリアンさん 「警察官が請求して裁判官が逮捕状を発付しなければいけない」
など、制度上で少し似ているところがあるので、それを比較しながら、
「もっとケニアの法律を良くするためにはどうしたらよいか」
という観点で研究を進めています。
崎長 それは興味深いですね。ありがとうございます。
それでは、ヘンカーさん、お願いします。
ヘンカーさん 私は今、最終学年ということで博士論文執筆真っ最中・・・
という状況です。
論文のテーマは、「日本の医療機関における環境経営の促進」です。
気候変動と医療っていうと「熱中症」とか、
災害時と医療では「救済」「救助」などがメインで語られますけれども、
一方で、「その医療サービスを提供する」ってこと自体が
「人の活動」ですので、それ自体が温暖化ガスを排出したりしていて
環境に負荷を与えている。
そういうところにも目を向ける必要があるんじゃないか・・・と考えていて。

ヘンカーさん ただ単に「省エネしましょう」とか、
「ゴミを減らしましょう」ではなくて、もっとこう本質的な
「必要な医療っていうのは何なのか」「どういった医療を選択すべきか」など
そういうところから、「医療ってそもそも何なんだろう」
「どうやって健康的に生きるのか」みたいな
本質的な部分にまで考えを及んでいければいいなって思っています。
学長 元々のご専門は?
ヘンカーさん 元々は産婦人科と救急医療に従事する医師をやっておりまして、
そこから公衆衛生を学び、国際医療にも関わり、
その流れで、もう少し実装科学の部分を、エビデンスや知識があっても、
なかなかそれが社会を変えるところまで至らない・・・
そのギャップの部分についてもうちょっと学びたくて、
プラネタリーヘルス学環に行き着いたという感じです。
【プラネタリーヘルス的に最近気になる話題】
崎長 ありがとうございます。皆さん、すごいですね~。
皆さんの詳しいお話は、また後ほどお伺いしましょう。
では、プラネタリーヘルス的に最近気になる話題って、何かありますか?
学長 いっぱいあるんだけどね~。国際的な動きとか。
プライベートな話だと、去年ロンドンに行ったときに、
猛暑でロンドンの地下鉄に乗れないの。
ホテルも扇風機一つでね・・・。
我々がこれまでは普通に生活してきたインフラで、
これからは耐えられるのかなっていうのが気になるね。

学長 あと、一番の関心事は、色々な場面でも話題になっている「AI」だね。
AIがプラネタリーヘルスにどう結びついていくかっていう点で、
非常に興味がありますね。
プラネタリーヘルスのテーマ自体が、
「ヘルス」「エコロジー」「リスク」じゃない。
特に「リスク」と「エコロジー」という面で、
AIが出す「答え」が今後色々影響してくるとなると・・・。
AIを本当に信じてもいいのか?とか、そういうことを色々考えるよね。
崎長 なるほど。AIについては、後ほどあらためて皆さんにも伺っていきましょう。
エイドリアンさん、ケニアの気候についてはいかがですか?
学長 ケニアは非常に気候が良いよね!とても過ごしやすくてびっくりした。
崎長 ケニアでは気候変動などの事象を感じていらっしゃいますか?
エイドリアンさん 洪水が起きますね。
それに伴う地滑りの発生や住まいが壊されるなどして、そこに住んでいる
人たちが避難しないといけない状況に陥っていることがあります。
政府がその対策として積極的に木を植えることをすすめており、
一般の人もCO2の削減などを意識して木を植えたりしています。
学長 ケニアを訪れたとき、国立公園に鉄道の高架ができていてびっくりしました。
それによって、木が伐採されていて、動物たちも姿をあらわして
くれなかったので、その点からも環境の変化について感じましたね。
エイドリアンさん 人による開発が国立公園にも広がっているため、
野生動物の生息域がどんどん狭められていて、
逆に国立公園から外に出されてしまうような環境もあります。

崎長 ヘンカーさんはアメリカにお住まいだったのですよね。
アメリカのどちらに?
ヘンカーさん ピッツバーグです。
ピッツバーグは大気汚染がひどいところで、
住んでいる人たちがコロナ禍で職場へ仕事に行かない、
車を使わない・・・となった時期に、外に出た時の、その空の青さ!
空の色が全然違うんです。
人の活動がいかに影響を与えているのかっていうことを目の当たりにしました。
崎長 田仲さんは海がご専門なんですよね。何か気になっていることはありますか?
田仲さん 先日、友達と小江まで釣りに行ったんですけれど、
海がきれいなので、上から見ても水中の魚が見えるんですね。
その泳いでいる魚たちの中で、10年~20年位前だと「熱帯にしかいない」
と言われていたような魚が1匹いるのが見えて・・・。
2週間ぐらい前(編集注:1月中旬ごろ)だったんですけれど、
冬でもまだ「いる」っていうのは、やっぱり海水温が
上がっているんだなということをデータだけじゃなくて
「実際に自分の目で見て感じた」という気がすごくしました。
学長 実際に魚の分布が違ってきているわけですね。
田仲さん そうですね。長崎でも漁獲量が変わっている魚などがありますね。
崎長 え~!じゃあ、長崎の美味しい魚が食べられなくなる・・・
そういう可能性もあるのかな!?

全員 (笑)
学長 今、産学官連携プロジェクト「ながさきBLUEエコノミー」で、
高島で養殖をやっているでしょう。
そこでも海水温が高くて・・・。
田仲さん 海水に手を入れたら、少しぬるく感じるような水温ですね。
学長 品質改良で高温に強い魚を・・・というのが水産学部の
一つの研究テーマでもあるよね。
田仲さん 私の専門とはまた違うんですけれど、
そのような研究をされている先生も多いですね。
【AIについて各研究分野では・・・】
崎長 先ほど学長からAIのお話がありましたが、
ご自分たちの周りではどうですか?
研究でAIを使ったり、AIについてどう考えているか・・・
などについてお聞きします。
エイドリアンさん 警察の捜査ではAIが使われますが、
証拠収集などが憲法や刑事訴訟法の規準をきちんと
満たしているのか、という問題があります。
警察の捜査において人権への適切な配慮がなされているか
どうかを確認するのにAIを使うという点では、ポジティブに思っています。
しかし、AIを使った捜査とかに対しては、まだ規制や法整備が
整っていないのが問題です。AIをどう使うのかについては、
これから議論が必要だと考えています。
ヘンカーさん 医療分野ではAIによる画像診断などがすでにあり、
そういう意味で「AIの得意な部分」というものがあると思うんですが、
じゃあ、医者って何だろうってところをやっぱり考えますね。
何がAIでできて、人間の医者であること、人間の看護師であることの意味は
何かっていうことをすごく考えさせられます。

ヘンカーさん 今の医療現場は忙しい、なかなか患者さんに
しっかり向き合う時間がない・・・というところで、
人材不足解消のためにAIであるとか、テクノロジーっていうものは
活用すべきじゃないかと思うし、
もはや逃れられないんじゃないかというふうに思っています。
じゃあ、その新たに生まれた時間で、私たちは人間として
どういう風に患者さんと向き合っていくのか・・・。
その部分が私はプラネタリーヘルスに結びついて
いくんじゃないかと思っています。
特に、その人が求める生き方が何か、そこに医療というものが
どうかかわるのかについて患者さんとの対話をきちんとしていくことで、
例えば「なんか不安だから病院に行く」「不必要なお薬を得てしまう」などの
無駄な医療を減らしていくことができるのではないか。そうすると、
それが医療経済もよくなり、患者さんの生活の質の向上にもつながり、そして
環境にもよくなるという3つの利益を得られるんじゃないかと思っています。
もちろん、ディスインフォメーションなどの負の側面もあるとは思います。
崎長 私も研修医の皆さんと一緒に、生成AIを実際に使っていますね。
便利な側面もありますが、やはり、情報の信用性が低い時があるので、
チェックが必要ですね。
ヘンカーさん 自分の博士論文を進めるにあたっては、
統計解析のプログラミング言語のRを考えるのに
ChatGPTやGeminiを使うことで時間の短縮になっています。
崎長 田仲さんの研究分野ではどうですか?
田仲さん そうですね。水産系だと、AIの利用について
リスクもデメリットもあると思うのですが、
良い面では、生物の同定・・・どの種類かを特定するときに、
画像解析がすごく役立つだろうなとは思います。
例えば、魚の分布がどんどん変わってきていて、
獲れた魚が有毒か無毒かわからないときに、
画像を入力して有毒か無毒か、食べられるかどうかが
すぐわかるようになるのは、すごく良いと思います。

田仲さん ただ、良くない面としては、AIによる画像生成が・・・。
この間、名前で調べようと思って、魚の名前を使って検索したら、
検索結果の上の方に画像生成で作られた実際にはいない
魚の画像が出てきて・・・。
「よく見たらヒレの数が違う」など、ちゃんと勉強している人が
見たら見分けられるけれど、勉強していない人だと見分けられないので、
正しくない知識が広まるのではという懸念があります。
全員 なるほど!
崎長 図書館に関連することだと、「AIを使用して、紙の本をなくす」
という話題がありますが、原本の紙の本は改ざんができないので、
やっぱり貴重だ。紙の本は無くならないだろう。
・・・と言われていますね。
あと、個人的にはAIを使うことで膨大な電力を使うのは、
今後どうなるのかな・・・という点が気になっていますね。
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大学院で「プラネタリーヘルス」をテーマに学ぶ学生たちの研究内容は、驚くほど幅広く、多様です。
次回以降の話題は、
「自分の研究はプラネタリーヘルスのどこに位置づけられるのか?」
そして、「おすすめの図書の紹介」です。
どうぞお楽しみに!
(編集注)
本対談は日本語と英語を交えて行われましたが、ブログ掲載にあたり、内容はすべて日本語に翻訳し編集しております。(当日の通訳:森保先生)