『医学教育白書 2022年版』
日本医学教育学会学会広報・情報基盤委員会編集 (篠原出版新社, 2022.7)
いつか君といった 映画がまたくる
授業抜け出して二人ででかけた
哀しい場面では 涙ぐんでいた
(中略)
過ぎ去った昔が
あざやかに よみがえる
君もみるだろうか 「いちご白書」を
二人だけのメモリー どこかでもう一度
「『いちご白書』をもう一度」は1975年、ユーミン(荒井由実)作詞作曲、歌はフォークグループのバンバン。ミリオンセラーの大ヒット曲だ。
この曲は、多くの歌い手がカバーしている。河村隆一、中森明菜、坂本冬美、やなわらばー……。たぶん、皆さん一度は聞いたことがあると思う。やっぱり、ユーミンは天才だ。こんな歌詞が、21歳の時に浮かぶんだから。
歌詞の内容は、主人公が学生時代(1970年)流行っていた『いちご白書』というアメリカの映画を、しばらく経って懐かしく思い出す…という表面的には失恋ソングみたいな感じだ。しかし、歌詞には様々な意味が含まれていて、それゆえ大ヒットしたと思われる。いわゆる団塊の世代(戦後生まれ)が体験した、上の世代(戦前世代)との軋轢や社会に対する矛盾や葛藤等を描き、学生運動や闘争と呼ばれるムーブメントの末、挫折してゆく…という世界的なムーブメント(ざっくり言えばの話だが)を、さらりとした回顧ソング、失恋ソングみたいな感じで描いている。
今の70歳前後の方が若かりし頃のお話だが、今ある世界の社会やシステムのほとんどが、その世代が作り上げたと言っても過言でないかもしれない。例えば、日本の芸能人でいえば、ビートたけし、タモリ、矢沢永吉、吉田拓郎、井上陽水……ビックネームばかりで、その分野を作り上げた人達ばかりだから、お分かりかと思う。若干ユーミンはその世代より下だが、ほんと、ユーミンは凄いとしか言いようのない人だ。
今日僕が、どうしてもこじつけたいのは(ご勘弁を)、僕的に「白書」といえば『いちご白書』なのだが、たぶん誰も読まないであろう『医学教育白書』という本がある。1972年からおおよそ4年毎に日本医学教育学会から発行されている。
そう、日本医学教育学会といえば、今年の7月28日・29日に出島メッセ長崎で開催される、あの学会だ! 誰も知らない? そうだろう(笑)。でも、僕にとっては非常に重要なのだ。
医学教育という分野を約25年やってきた僕は、2022年度版の『医学教育白書』を今何度も読んでいる。なぜって? 僕は、長崎大会の会長をするから。必死の一夜漬けといえば、そうなのだが(笑)。
どの世界でもそうだが、世代間の軋轢・ギャップや葛藤はある。僕の生きる業界は、「教育」の業界だから、世界的にみると戦後から今まで、大きな闘争みたいなことがあった。それは、ひと言でいうと、「教師中心の教育」から「生徒中心の教育」への転換だ。そのきっかけが起こったのが、『いちご白書』の1970年代頃なのだ。急ではないが、徐々に日本は、軍隊主義(根底には、封建主義的な身分制度)の教育から民主主義の教育へ、体罰が当たり前の教育から体罰が罪の教育へ、一方向性の教育から双方向性の教育へ……、徐々に転換してきた。ある意味それは、世代間の闘争でもあったわけで、僕の仕事は時代の流れに沿って、上の世代と格闘して、それを推し進めるものだった。
「研修医は、奴隷で親分に従うことが教育」から「研修医は、学習者」へ、「研修医は、上の者の背中をみて学ぶ」から「研修医は、プログラムの中で学ぶ」へ、「10年もしたら自然と一人前になる」から「目標と方法を明確にして、指導体制を構築」へ……。
そういうことを僕は25年間やってきた。良いか悪いかは別として、それは時代の流れだった。日本の西の端の長崎で、世界の流れに遅れないように、「『いちご白書』をもう一度」を聴きながら、『医学白書』を読んで頑張ってきたわけなんですよ(笑)。
最後に、また宣伝ですが、
第55回 日本医学教育学会大会
2023年7月28~29日 出島メッセにて。
医療関係者の方は、ぜひご参加ください。市民公開講座(事前申込必要)もあります!
ホ~ホッホッホ! 長大図書館ミニパネル展もあるよ!! めずらしい古写真が見れますよ。
織姫風★館長
▼所蔵情報
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【黒にゃんこ司書のつぶやき】
こんにゃちは。黒にゃんこ司書です。白書とは、一般的には行政機関が発行する活動報告書を指しますが、なぜ「白書」と呼ばれるようになったのか、みなさんご存知でしょうか? その由来は、「イギリス政府が外交に関する報告書を白表紙white paperで刊行したのがきっかけ」で、日本では1947年刊行の「経済白書」で初めて使われた言葉なんだそうです。(日本大百科全書(ニッポニカ) JapanKnowledge Libより一部抜粋)。戦後生まれの割と新しい言葉なんですね。それじゃ、またにゃ~♪