ぶらりらいぶらり:長崎大学図書館ブログ

長崎大学附属図書館からお届けするブログです。 ぶらり、ぶらりと図書館へどうぞ。

【連載】フクロウ館長イチ推しの本  

第1回:図書館の神様 (瀬尾まいこ著 2003年)  

 僕は、図書館では、本を読まない。でも、よく図書館に行く。小学校の頃は、かくれんぼのいい隠れ場所であったし、中学校の頃は内緒の話をする場所で、高校の頃は昼寝の場所だった。浪人時代は、朝から晩まで図書館の隅っこで数学を解いた。大学時代は、友達のノートをコピーしたり、待ち合わせや休講の暇つぶしの場所であった。

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でも、なんとなく図書館から守られている感じがあったと思う。古い沢山の本は、無知で生意気で向こう見ずな若い僕を優しく包んでくれていた。図書館の止まったような時間は、激しく流れ日々変わる若い僕の感情をなだめてくれた。いつ行っても、無表情で淡々と受け入れてくれる図書館に僕は何度も救われたんじゃないかと、振り返るとそう思う。

 

図書館には、それぞれの思い出や思い入れがあると思う。

だから、『図書館』とつく題名の小説、漫画、映画等は意外と多い。小説では『図書館戦争』が有名だが、今日は、瀬尾まいこ作『図書館の神様』を紹介する。瀬尾さんの作品には、悪い人は出てこない。だけど、ちょっと変な人だったり、傷ついた人とか、トラブルを抱えた人が出てきて、良い感じに、リアル感を伴って物語が展開されて心地よい読後感を与えてくれる。デビュー2作目の本作で、その傾向を決定づけるものとなったと個人的には思う。図書館が前面に出るわけではないのだが、図書館の奥深さと寛容さを秘めたストーリー。あなたの中にも、『図書館』があることを気づかせてくれる素敵な本。

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フクロウ館長(長崎大学附属図書館長 浜田久之)

 

f:id:nulib:20210826132338p:plain【黒にゃんこ司書のつぶやき】

連載1回目にして、早くも先生の幼少期のお話が出てきました。図書館の中でかくれんぼする感じ、確かに書架が迷路のようで楽しいのか~。でもやっぱり危ないのでけしからんです! 浜田少年はきっと周りの大人に怒られたことでしょう。

書架の膨大な本に囲まれていると、確かにいろいろな人の声が聞こえてきそうな時があります(幻聴やオカルトでなく)。本に込められた著者の強い想いがそうさせるのかもしれませんね。