ぶらりらいぶらり:長崎大学図書館ブログ

長崎大学附属図書館からお届けするブログです。 ぶらり、ぶらりと図書館へどうぞ。

八月に、手に取ってもらいたい本【医学分館】

梅雨が短かった今年の夏は、とても長く感じますね。

ようやく八月も折り返しです。

 

原爆の日終戦記念日を迎える八月は、戦争や平和のことをより深く考える月です。

そんな八月にぜひ手に取ってもらいたい図書をご紹介します。

 

収容所(ラーゲリ)から来た遺書 / 辺見じゅん

〈所蔵館:中央図書館、医学分館〉

OPAC情報はこちらから↓

 

opac.lb.nagasaki-u.ac.jp

 

 

収容所と聞くと、アウシュビッツなどのユダヤ強制収容所を思い起こす方が多いかと思いますが、この本に出てくる収容所は旧ソ連収容所(ラーゲリです。

終戦後、中国大陸に駐屯していた多くの日本兵ソ連軍に捕らわれ、極寒のシベリアで強制労働を強いられました。そんな境遇のなかで、「必ず生きて日本へ帰る」という意志を絶やすことなく生きた一人の男・山本幡男について、丹念に取材を重ねたノンフィクション作品です。

 

ノンフィクションというと、とても重くつらい作品のように感じるかもしれませんが、意外と文化的な描写も多かったりします。

シベリア抑留中、山本幡男は収容所の仲間を誘って句会を開いてました。そこには、「みんなで帰国するその日まで、美しい日本語を忘れぬようにしたい」という山本の熱い思いが込められています。単調で辛いだけだった強制労働が、句作の題材探しの場となると違ったものに感じた、という句会メンバーの心境も語られています。メンバーは皆俳号を持ち、句会では軍にいた頃の階級に関係なく俳号で呼び合っていたそうですよ。

 

そのほか、収容所内で演劇団を組む人たちもいたり、また日本兵だけではなく中国や朝鮮半島の若者たちも収容されていたり、あまり知らなかったソ連軍の強制収容所の実態に驚きました。

 

まだ少し先のことですが、この本を原作とした映画が12月に公開予定のようです。

早めに原作を読んで、映画を楽しみに待つのもよいのではないでしょうか。

 

 

K.O