ぶらりらいぶらり:長崎大学図書館ブログ

長崎大学附属図書館からお届けするブログです。 ぶらり、ぶらりと図書館へどうぞ。

【連載第62回】フクロウ館長イチ推しの本

『選択の科学 : コロンビア大学ビジネススクール特別講義』
シーナ・アイエンガー著 ; 櫻井祐子訳(文春文庫, 2014年)

 

人生は、選択の連続です。

多くの選択肢の中から自ら選び、あるいは他動的な選択の結果、今の自分がここに存在しています。つまり、僕自身も、あなた自身も、選択の結果の産物のようです。そして、今日も

「さて、どうするか? どっちの道に進むか?」と迷いに迷い、結果的に一つを選択しなければならない状況となります。日々選択し、今日まで生きてきた私たち。選択する行為そのものが、未来の僕自身、あなた自身を形作るのですから、選択イコール人生そのものと言ってもいいのでしょうね。

 

失礼ですが、あなたはこれまでどんな選択をしてきましたか? 人生のターニングポイントの選択は、いつ、どんな選択だったのでしょうか? 少し振り返ってみてください。

 

僕の場合? 紆余曲折あり、何度も何度も眠れない夜に選択肢を増やせるか、減らせるか、選べるかなどと悩み、40歳を過ぎてから大学教員の職に就いていました。その後も悩みながら多くの選択をした結果、今は大学附属図書館長も兼務し、本を選ぶ「選書」という仕事もしています。時々は、新聞や雑誌に推薦図書を書いたりもしています。そして、このブログで月に1冊の本を紹介する機会を得ました。これで62回目となりました。

 

今日、僕が選んで皆さんにお届けする本は、『選択の科学』(シーナ・アイエンガー著、文春文庫, 2014.7)。全盲コロンビア大学教授が書いた世界的なベストセラーとなった本です。

 

僕は入試関係の仕事をしていた時に、よく高校生から相談を受けました。

 

「経済、商、法学部で迷ってます、決められないんです…」

 

と、ある男子高校2年生。さらに別の女子2年生は、

 

「全然決められないです。大学へは行きたいんですけど…」

 

彼ら、彼女らはいつかは自分の進路を選択しなければなりません。どの学部やどの大学にするかで大いに悩みます。もちろん、そこに合格するまで学力をあげなければなりません。

 

しかし、選択すること、選択できることは、生きる力となります。彼ら、彼女らは苦悩しながらも自ら選択し、自分の道を切り拓いて行きます。多大なストレスがあろうとも、自ら「選択することが人間の本能」であり、生きる力になると本書では説いています。「高ストレスの社長の寿命は長く、満ち足りた動物園の動物の寿命は短い」とあります。我々は自ら判断し選択しなければならないことが多いのですが、本書によるとそれは「幸せなこと」のようです。

 

 

<日本人は背景を見る。アメリカ人は個人を見る。>

本書では心理学的な実験データがたくさん示されており、「選択を科学的に分析」しています。

 

金魚が3匹水槽の中で泳いでいる絵を見て答える実験では、アメリカ人は3匹の金魚について感想を述べますが、日本人は金魚の後ろの水槽の中の藻や石や他の生き物(蛙)などに着眼するそうです。つまり日本人は背景を読み、その集団に流れている文脈を読み取り選択する…という訳です。よくありますよね、「仕方ない、私がやりますよ。だって皆さん(病棟や医局や病院)がそれを望んでいるわけでしょう。私がそれをやればいいんでしょう」みたいな選択。実は僕は正直、そんな選択ばかりしてきました(笑)。誰もやらない、やりたがらない隙間産業(新人教育)をずっとやってきたわけですが、それは結果として「集団のための選択」だったわけです。本書を読んで「なるほど」と思いましたね、僕は背景を読み、選択を続けたのだと。

 

<強制された選択>

「自分は全体的な知性と能力で見て上位10%に入ると考えている」と、9割の人は思うそうです。要するに「人は自分をその他大勢と見られることに我慢できない」と思っているようです。しかし選択の際は、周囲の人の影響を知らず知らずに受けており、おのずと強制された選択をして、その他大勢になっていく自分がいます。保守的な日本の世界で、個を貫く選択は非常に難しいでしょうね。すぐ叩かれたりしますからね。でも抜きん出た個が集団を牽引することは、どの世界でも同じでしょう。

 

<選択に影響するもの>

さて、我々は何のために選択をするのでしょうか? 幸せのため? そうかもしれません。幸せとは、お金? 確かにそうなのかもしれません。しかし「年収は幸福度にほとんど影響を及ぼさなかった」という研究は多数あるそうです。選択を左右するものには、もちろんお金もあると思いますが、本書では習慣や経験が大きく影響すると論理立てています。

 

心理学では有名なマシュマロテストというものがあります。4歳の子供の目の前に、マシュマロを置く。食べないように言いつけて大人が去る。何分我慢できるかを測定する。誘惑に負けない選択をした自制心のある子供は、その後の大学進学適正試験(SAT)では、マシュマロをすぐ食べた子より、高得点を取ったという実験です(賛否両論あります)。おそらく医師となった人たちは、マシュマロを我慢する教育と習慣を身に着けた自制心がある集団だったのではないかと推測します。現在、自制心のあるあなたの選択は何に影響されているでしょうか? 僕の場合は<時間>です。もうずいぶん年を取りましたので、残りの時間を考えると、これからの選択に<時間>的な要素が大きく作用しそうです。

 

<選択には苦痛が伴う>

例えば「どの学部に行くべき?」、「地元の大学に行くべき?」、「どのサークルに入ったらいいか?」、「あの先生のゼミに入ろうか、どうしよう」、「公務員試験を受けるべきか……」、「やっぱり東京で就職すべき?」、「地元に帰るべき?」と考え、私たちは悩みます。当然2択、3択の中から何を選択しようが、ある種の苦痛が起こります。選択による代償がつきまとい、人生を狂わせることもあります。また、「豊富な選択肢が我々を苦しめる」ことも多々あります。

 

苦しい選択をどう乗り越えてゆくかを、著者は様々な実験とデータを示しています。

 

<最後は、三元連立方程式………>

著者は最終的に、科学の力の及ばないところ、偶然と運命による選択があり、それは芸術であると述べています。確かに「選択と偶然と運命の三元連立方程式」を解き明かすことは、AIでもできないでしょうね。偶然あなたはこの記事を読む選択して、この本に出合いました。これが運命なのかどうかは分かりませんが、様々な選択の機会の時に本書を参考にしていただければ幸いです。

 

さて、今日の昼ごはんはカレーにしようか、ラーメンにしようか、う~~ん、悩むなあ~、あれっ、定食もいいじゃん、どうするか~~~究極の選択だ~! ホ~ホッホホ、次回をお楽しみに。

 

(本稿は2025年4月に医療従事者専用サイト「m3」に掲載された記事を再編集して掲載しております)

 

 

▼所蔵情報

選択の科学 : コロンビア大学ビジネススクール特別講義  

 

これまでの書評はこちらから読むことができます。

▼崎長ライト(長崎大学図書館長)の "この本読んでみた!"

https://booklog.jp/users/sakinagalight

 

【黒にゃんこ司書のつぶやき】

こんにゃちは、黒にゃんこ司書です。毎日が選択の連続・・・というわけで(?)、日ごろの自分の選択を省みるべく、帰宅後の行動を振り返ってみました。すぐ夜ごはんの支度をする or 一旦ソファでアイスを食べる。スマホSNSを徘徊する or猫と遊ぶ。シャワーを浴びる or 風呂キャンする(夏は無理!)。早寝する or 夜更かしする。いらぬ選択をせずにすむ最強の方法、それは「習慣化」! 「この時はコレ」とルーティーン化してしまえば、選択を誤ることもなく、夜更かしのツケで翌朝自分のクビを絞めずにすむのになぁ・・・(涙)。それじゃ、またにゃ~♪