<キュンストレーキとは何か?>
池松医学部長 前回のお話で、長崎大学附属図書館医学分館に保存されている165年前のキュンスト
レーキ(紙製人体模型)が、危機的状況にあることがわかりました。皆さんの力でなん
とか修復等をしたいと思っていますが、その前に、ぜひ、キュンストレーキについて
知ってもらいたいと思います。

キュンストレーキの状態について語り合う池松医学部長と浜田図書館長
永安学長 そもそもキュンストレーキとは、誰が作ったものなんですか?
日本には、いくつくらいあるの?
松田 キュンストレーキは、1825年にフランス人解剖学者のオズーが考案し発表したものです。
同種の人体模型は、福井に二体、金沢に一体、本学の一体の計4体が現存しています。
当館の人体模型だけが特に損傷がひどいのですが、原爆の被災をも奇跡的に免れ、本学の
歴史とともに歩んできた165年という時の重さを感じる資料となっています。

被爆前のキュンストレーキ(左)と現在のキュンストレーキ(右)
池松医学部長 なるほど、本学のキュンストレーキは、他と比べると原爆を生き抜いてきたという歴史
を背負った大きな意義を担っているんですね。原爆投下の前後にキュンストレーキを巡
るエピソードがあれば教えてください。
松田 解剖が一般的ではない時代に、人体の仕組みを学ぶ教材として、多くの学生の勉学に寄
与したキュンストレーキは、役目を終えた後、解剖学教室の標本室で保管されていたそ
うです。原爆投下直前、佐藤純一郎助教授(当時)のフトした予感により、鉄筋コンク
リート造の図書館の書庫に避難させたことで全焼を免れました。
あのまま標本室に保管されていたら、今ここに存在していなかったことを思うと、
このキュンストレーキを守りたいという気持ちが一層強くなります。

司書(松田)から医学分館の貴重資料について説明を受ける永安学長
永安学長 貴重なエピソードを、ありがとうございました。歴代の図書館員の皆さんの苦労もあった
でしょうね。
松田 そうですね。土台が紙なので、温度や湿度の管理には常に気を配る必要があります。
また今の所はなんとか自立していますが、倒壊する恐れを秘めていますので、
朝出勤して、しゃんと立つキュンストレーキを確認しては、胸をなでおろす毎日です。

被爆後の長崎医科大学基礎キャンパスの写真(米国陸軍病理学研究所返還写真)
※左下の白い建物が図書館の新書庫。キュンストレーキはここの2階で被災
池松医学部長 熱い思いがよくわかりました。奇跡的に生き残って自立しているキュンストレーキを
何とか守りたい気持ちが強くなりましたね。ぜひ、医学部の卒業生だけでなく、
県民、市民のみなさんの力をお貸しして頂ければと思っております。
永安学長 そうですね。皆の力で支えてもらうことに意義があると思いますね。平和な社会でな
ければ自由に学ぶことも研究することもできないので。
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