寒さもやわらぎ、梅や早咲きの桜なども見える穏やかな季節になりました。
こんなときはゆったりと本のページをめくってみるのはいかがでしょう。
というわけで、今日は経済学部分館の新着本から2冊を紹介したいと思います。
1冊目はこちら。

『Lost in Translation : an illustrated compendium of untranslatable words from around the world / Ella Frances Sanders著・イラスト』(左)図書ID:3193189 経済分館(新着図書)
邦題『翻訳できない世界のことば』(右)の原書です。翻訳版は中央図書館で所蔵されています。(図書ID:1593526)
世界の言語を見比べてみると、「りんご=Apple」のように1対1で対応する語ばかりではありません。訳そうにも、その語にぴったりとあてはまる概念そのものがない、そんなことばたちがあります。
たとえば、こんなことばです。(訳文は前述『翻訳できない世界のことば』から引用)
Kilig (キリグ・タガログ語・名詞)
The feeling of butterflies in your stomach, usually when something romantic or cute takes place.
(おなかの中に蝶が舞っている気分。たいてい、ロマンチックなことや、
すてきなことが起きたときに感じる。)
しいていえば「ときめき」や「わくわく」といったところでしょうか。
「蝶が舞っているよう」という表現でそのほわほわした気持ちが伝わりますね。
Poronkusema(ポロンクセマ・フィンランド語・名詞)
The distance a reindeer can comfortably travel before taking break.
(トナカイが休憩なしで、疲れず移動できる距離。)
トナカイとともに暮らしていた人びとの生活の中から生まれたことばなのですね。
ちなみにだいたい7.5㎞くらいだそうです。
たくさんの国のことばが1ページに1語ずつ、著者自身が描いたイラストとともに紹介されています。英語なので少し難しいですが、イラストを頼りにことばのイメージを想像してみてはいかがでしょうか。もちろん、翻訳版と見比べながら読んでみるのもおすすめです。
さて、この本の中にはどんな日本語が紹介されていると思いますか。
著者の目に新鮮に映った日本語はどんなことばでしょう。
実は「こもれび」「わびさび」といった、いかにも「日本的な」ことばのほかに、
「積ん読(Tsundoku)」ということばが載っているのです。
私には「え?『積ん読』ってそんなに特別なことばなの?」とちょっとした驚きでした。
日本以外の人は「積ん読」しないのだろうかとも思いましたが、そうではなく
「本を買ってきて読まずに積んでおく」という行為自体に「名前がある」ということが、
ほかの国の人から見るととてもおもしろいことなのかなと思います。
そこで2冊目の本はこちら。ずばり『積ん読の本』。

『積ん読の本 / 石井千湖著』図書ID:3193080 経済分館(新着図書)
この本の「はじめに」によれば、1906年に発行された『俚諺辞典』(幸田露伴閲、熊代彦太郎編)にも「積読法」という語が載っているそうです。
なんと(!)思いのほか古い時代からある日本語だったんですね。
この本では、小説家、書評家、特殊翻訳家、文学研究者など、本を読むことや書くことをなりわいとしていらっしゃる12人の方のお部屋を訪ねて、写真とともにその方たちの本をめぐるストーリーを紹介しています。
まず圧巻なのは、ずらりと並んだり、積み上げられたりしている本の数!個人のお宅なのに、図書館といっても過言ではないほどの蔵書量に驚かされます。
本との関わり方もまさに十人十色(12人ですが)。先ほどの本では「積ん読」は「まだ読んでない本を積んでおくこと」と紹介されていますが、文筆活動が本業の方たちですから、もちろん「もう読んだ本」も多数「積んで」あります。
「積ん読はしたくない派」で「読む前提だけど、時間がなかったり、タイミングが合わなかったりして、少しのあいだ置いてある(作家/角田光代さん)」という方から、膨大な本のうち通読したことがあるのは「2割くらい」で「本は自分の関心事が物の形をとった知識のインデックスみたいなものなので、必要になったときに読めばいい(文筆家・ゲーム作家/山本貴光さん)」という方まで、「積ん読」への考え方もさまざま。
幼少期の本との出会いや現在のお仕事と本の関わりなど、話題は多岐にわたります。「積ん読」を通してそれぞれの方の人生も垣間見える、そんな本です。
どちらも経済学部分館1階の新着図書コーナーにあります。
ぜひ読んでみてくださいね。
Rig