『先生、どうか皆の前でほめないで下さい : いい子症候群の若者たち』
金間大介著(東洋経済新報社, 2022.3)
「先生、どうか皆の前でほめないでください」
「成功した人も、しない人も平等にしてください」
「自分の提案が採用されるのが怖いです」
「浮いたらどうしようと、いつも考えます」……
学生のみなさん、あなたのことだ。
世間では、今の若者のことを「素直でいい子」、「まじめでいい子」と評する。
いい子には次のような行動原則がある。
- 周りと仲良くでき、協調性がある
- 一見、さわやかで若者らしさがある
- 横並びが基本
- 5人で順番を決めるときは3番か4番目を狙う
- 言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない
- 人の意見は聞くけど、自分の意見は言わない
- 質問しない
- タテのつながりを怖がり、ヨコの空気を大事にする
- 自己肯定感が低い
- 競争が嫌い
- 特にやりたいことはない
本書の著者である金間大介氏は、こうした現代の若者を「いい子症候群」と定義している。なるほど!そうそう!あるある!と、多くのオジサンやオバサンは頷く本である。特に、学生と接する人(主に教員)、「なんで最近の学生は……」と嘆き悩んでいる人には、必読の本だ。著者も大学の先生で、いつも学生と接しており、現場の鋭い分析とデータを交えた良書だ。
最後の章のタイトルは、「いい子症候群の若者たちへ」。沢山良いメッセージがあるが、ひとつ紹介しよう。
「人が人生の進路を決める際、考慮する要素は3つしかない。①コト ②ヒト ③場所。」
やりたいコト。こういうヒト達と一緒に働きたい。この場所で何かしたい。①②③は、人それぞれに重み付けがあり、優先順位がある…と書いてある。
僕が図書館長という進路を決めた時は、「図書館という場所③で、学生と一緒に学びたい②、そして何かしたい~①」という感じであったろうか…。オ~ホッホッホ、次回をお楽しみに。
初年次セミナー「資料収集ガイダンス」の一コマ
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【黒にゃんこ司書のつぶやき】
こんにゃちは。黒にゃんこ司書です。今回の書評を読んで、今年の新書大賞で2位になった『映画を早送りで観る人たち』というタイトルの本を思い出しました。その中で、「無駄は悪。コスパこそ正義」という言葉が出てくるのですが、タイムパフォーマンス(タイパと略されるんだとか)が一番大事、近道を知りたがる人が増えているそうです。現代人は忙しすぎる! コスパ・タイパを追い求めて、「いい子」でいるためにキリキリするのも疲れた・・・そんな時はちょっと一息、ブレイクタイムに図書館で読書を楽しんでください。それじゃまたにゃ~♪