ぶらりらいぶらり:長崎大学図書館ブログ

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他人事ではない戦争のこと【経済学部分館 展示】

日本が体験した第二次世界大戦の終わりから今年で77年が経ちます。
現代に生きる私たちは、体験者の話を聞いたり、テレビで戦争の映像を
見たりする機会があると、心を痛め、涙を流し、時に怒りさえ覚えます。
戦火にあえぐ人たちのニュースを見て憤りつつ、
同時に今夜のおかずのことや明日の仕事の段取りを考えてしまう・・・。
しかし、それが現実の自分だったりもします。

長い人類の歴史を通じて、戦争がもたらす愚かな災厄をさんざん学んでいる
にもかかわらず、世界から戦争がなくならないのはなぜでしょうか。

豊かな時代に生まれ、平和ボケしているとさえ言われて久しい現代日本人。
「何事も直接に体験した者でないと本当に『知る』ことはできない」と、
賢者たちの言葉にはありますが、戦争に関してだけはそれでは遅いような
気がします。
それでも、戦争を体験していない私たちが、今からそれをしてみるという
わけにはいきませんから、体験者の声に素直に耳を傾ける姿勢は失わずに
いたいものです。

今、経済分館では戦争にまつわる展示をおこなっています。


1Fブックトラック展示 「他人事ではない戦争のこと」


① 「杉浦千畝 ― 情報に賭けた外交官」 白石仁章 著
杉浦千畝(すぎうら ちうね)という人は、第二次世界大戦下において、
国の命令よりも人間としての判断を重んじ、外交官として多くのユダヤ
避難民を救った人です。外交官としては、日本においてよりも海外で高く
評価されています。
戦下にあって、自分を貫いたこの人の生き方は素直に尊敬に価するような
気がしてなりません。


②「ミス・サンシャイン」 吉田修一 著
ご存知、長崎を代表する作家、吉田修一が、これまで語ってこなかった原爆を
題材にして書き上げた小説です。戦争によって運命が変わってしまった人は、
たくさん、ほんとうにたくさんいるのだろうと思わされる作品。
現代の若者が80代の女性に恋をするという設定は、戦争の悲惨さを少しだけ
救ってくれるような気がしました。

ロシアとウクライナの戦争が資源不足を呼び、燃料の高騰や急激な円安に拍車を
かけていることだけが私たちに対する戦争の影響だ、というのは、戦争が自分には
関係のない他人事だと自ら表明していることになるのかもしれません。

 「たいていの軍事行動は、平和を目的としています。しかし現実の戦争は、
  まるで生きた人間を燃料とした火事のようです。」―ダライ・ラマ14世― 

この言葉は、人間の愚かさを受け入れていない私たちへの教訓のようにも感じますね。

Sh67