昨年99歳でお亡くなりになった、
尼僧であり作家の瀬戸内寂聴(瀬戸内晴美)さん。
1922年(大正11年)5月15日生まれ。
生きていれば、来週100歳を迎えるところでした。
そんな寂聴さんのある恋愛を描いた、
今秋映画化もされるという小説がこれ。
「あちらにいる鬼」 井上荒野著 朝日文庫
(経済学部分館 新着図書コーナー)
講演旅行をきっかけに恋仲になった作家・井上光晴(いのうえみつはる)氏との顛末、
そしてそれを傍で見ていた光晴氏の妻を
その娘である井上荒野(いのうえあれの)氏がフィクションで描いた小説です。
父と不倫関係にある女性、それを見つめる母という
心中穏やかならぬ三角関係を実の娘が描く、だなんて
なんという世界…と驚愕してしまいますが、
「ドロドロした男女関係」という感じではないんです。
色々思うところがあったとしても、妻であろう女性と寂聴さんであろう女性は、
結局はいい関係を結んでいるし、
荒野さんはこの小説を書く上で、寂聴さんに何度か話を聞きに行ったと書いているし、
妬み嫉み(ねたみ・そねみ)が削がれた人間関係に、澄んだ心持ちにさせられました。
寂聴さんはもちろんのこと、井上さんご一家も、
邪気がなく、愛ある方たちなのだろうなあ。
生誕100年の今、寂聴さんに触れてみませんか。
Y58