ぶらりらいぶらり:長崎大学図書館ブログ

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【連載第10回】フクロウ館長イチ推しの本 

『アースダイバー 神社編』

中沢新一著 (講談社, 2021.4)

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「日本人の先祖は、どこから来て、どうやって日本人になったのだろう?」

最近の研究では、1万5千年くらい前に、もともと住んでいた縄文人と外から来た弥生人が一緒になって日本人の源になったようだが…、本当か? この疑問に人類学者の中沢新一は、身近な「神社」を通して明解に答えてくれる。

 

僕は、子供の時から、自分の先祖はどこから来たのだろう?と、疑問を持っていた。父に聞いてみると祖父は稲佐山被爆し、その後運転中に脳卒中(?)で亡くなったらしい。だから詳細はたどれないのだが、親類が調べたところ「濵田」家は、島根県浜田市から長崎の旧西彼杵郡大瀬戸町に流れ着いたという。ネットで調べてみると「濵田」は、三重県の浜田村がルーツとある…。まあ、これ以上調べようがないが、気にはなっている。誰か詳しい人がいたら、ぜび教えてほしい。

 

NHKの『ファミリーヒストリー』という番組では、著名人の祖先を丹念にたどってゆく番組なのだが、引き込まれる。その中でも、福山雅治さんのファミリーヒストリーが一番面白かった。僕が思春期に育った稲佐山近辺の話が盛りだくさんだった。さらに、NHKの『日本人のお名前』という番組では、苗字の由来(例えば、佐藤家、鈴木家)をさかのぼる。おそらく、誰しも、自分の苗字やルーツがどこから来ているかが気になるから、こういう番組が成り立つのだろう。

 

じゃあ、そもそも、日本人は、どこから来て、どうやって日本人になったのだろうか? 

そんなの歴史の教科書を読めばすむことじゃん、と言われるかもしれないが、歴史の本や教科書は、まったくつまらない。そもそも書かれた歴史がどれくらい本当か、怪しい。

 

その点、中沢新一の『アースダイバー』シリーズは面白い。人類学者がフィールドワークで歴史の謎を紐解いてゆく。現存する地形や地層や物証、方言や風習または古地図などで、太古の昔を探ってゆく。極端に言えば、タモリさんの『ブラタモリ』(これもNHK)もフィールドワーク的手法で、大昔の日本を探っていき、面白くしたバラエティー番組だが、中沢新一も超難解な学問を素人にわかりやすく解説してくれるので、人気がある。『アースダイバー 神社編』は、『週刊現代』に連載されたものをまとめて、2021年に発刊されている。週刊誌を読む僕のようなオジサンは、こういうネタが好きなのだ(笑)。

 

一番面白いのは、第八章『対馬神道』。

2千数百年前、中国の南西部に住んでいた倭人という海洋民族が対馬に移り住んで(後の弥生人)、先住民の縄文人と交じり合い日本人となってゆく『日本のはじまりの島』が対馬対馬には、そのころの歴史を引き継いだ神社や風習があり、中沢新一は『対馬神道』と呼び、日本の思想の根源のひとつを示すものと論を展開している。

 

実は、僕は対馬に幼少期に3年間住んでいた。

深い神秘的な山。入り組んだ海岸線から広がる蒼い海。夜、小高い山から海の遠くに隣の国の光が見えた。そんな、対馬での生活の体験を思い浮かべながら本を読んだ。う~~ん、そうだったのか!と何度もうなずいた。さすが中沢新一、アースダイバーの中でも最も研ぎ澄まされた『神社編』。深い歴史の森の中で、フクロウ(この本を読んだ人)だけが、祖先の真実を知っている…、ホーホーホー♪

次回をお楽しみに♪ フクロウ館長より

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▼所蔵情報

opac.lb.nagasaki-u.ac.jp

【黒にゃんこ司書のつぶやき】

こんにゃちは!長崎県民なのに壱岐対馬・五島に行ったことがない黒にゃんこ司書です。ファミリーヒストリー、私もたまに見ます(興味のある人の回だけ♪)。度肝抜かれたのが、俳優の長谷川博己さんの回。先祖は奈良時代鳥取・大山寺を開山(!)、神話のような伝説が残っている・・・等といった、ちょっとスケールがでか過ぎる神回でした。歴史って、時代背景と共に個人の物語の観点で見ると、特におもしろく感じます!それじゃまたにゃ~♪