ぶらりらいぶらり:長崎大学図書館ブログ

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【連載第8回】フクロウ館長イチ推しの本

スマホ脳』

アンデシュ・ハンセン著 ; 久山葉子訳(新潮社, 2020.11)

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クリスマスの夜は、すき焼き。研修医となった僕は、妻が作ってくれたすき焼きに、卵を落とし、箸をつけようとした。その瞬間に、ピーピーとけたたましい音が鳴った。

ポケットベルの小さな液晶に病院の電話番号。僕は病院へ飛んだ。それから泊り込んで、へとへとになり帰ったのは正月の朝だった。

 

ポケットベルから携帯電話(ガラケー)になった頃は、中堅の医者として最も忙しかった頃で、病棟からの電話は鳴り続けた。電話の内容は、9割方、悪い報告で緊急を要する。いい報告は電話する必要がないし、急ぎではない。だから、僕にとって(多かれ少なかれ、医療者は同じと思うが)、電話イコール悪い知らせ。今でも電話の鳴る音を聞くと、心拍数があがり、何か悪い予感が頭をよぎる。だから、電話は好きではなかった。

 

しかし、10年前、スマートフォンに変えると状況が変わった。

急ぎの報告も、メールとかラインとかが多くなった。すでに管理職となっていたから病棟からの連絡は減り、事務方からの連絡が急増した。東京に住む家族や昔の同級生達ともスマホで繋がり、なんだか楽しくなった。病気や薬の検索もできるし、新聞や小説も読めるし、飛行機の予約も買い物もできる。スマホさえあれば、他にはなにも要らない…という錯覚さえ覚える。

 

スマホ脳』によると大人は1日平均3時間、若者は4時間スマホを使っているらしい。便利すぎる一方、心のどこかでスマホがなくなればいい…とも僕は思う。だって、スマホのスケジュールに管理され、スマホのメールに返信に追われ、コンビニではポイントを貯めないといけないし、友達からのラインには、スタンプを押さなければならない。正直、疲れる。

 

本書は、指摘する。スマホは中毒性の高いドラッグで、SNSに人生の多くの時間を吸い取られ、メンタルヘルスがやられて、運動量が減って…不幸になる、と。『スマホ脳』の著者は精神科医で、人間の脳はデジタル社会に適応していないと、断言する。

僕は、この説に結構、賛成する。デジタル化になり、メンタルがやられる病気が増えてきていると思う。

 

スマホって、大丈夫?」

と、疑問を持つ子育て中の人やスマホ中毒と自覚する人には、ぜひ、読んで欲しい。本書では、脳に与える影響を科学的に検証し、賢い使い方を具体的に示している。

 

今年のクリスマスは、数年ぶりに久しぶり家族が集まれそうだ。すき焼きをしようと思う。スマホを切って、目の前にいる人を大切に思いながら、僕は卵を落とし、すき焼きを食べるはずだ。さて、美味しいすき焼きの作り方は…、今からスマホで検索してみるか…。。。。

 

フクロウ館長は、お正月休みは本を読んでゴロゴロします~。みなさん、よいお年を!また来年、図書館で会いましょう!

フクロウ館長より

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▼所蔵情報

 

【黒にゃんこ司書のつぶやき】

こんにゃちは!黒にゃんこ司書です。今や電話というより、メッセージ機能や写真・動画を撮る機械となっているスマートフォン。プライベートだと、よっぽどじゃないと電話かけない人も多いはず。ちなみに中央館別館2Fメディアルームに、懐かしの黒電話があるの知ってますか? 『三丁目の夕日』で見た、アレです。使い方がわからない学生さんが多いかもしれませんが、コピー機の故障などの機器トラブルがあったら、掲示の番号のダイヤルをジーコジーコと回してみてください。1F事務室からスタッフが飛んで行きます。それじゃまた来年にゃ~♪

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