業務で館内を巡回の際、足を止めると絶対に読みふけってしまいそうで、足早に通り過ぎる場所があります。
3F参考書コーナー(中央図書館)の
『古事類苑』の前
明治期から大正時代にかけて出版された日本史や国文学の基礎資料を収録した図書です。
今日はブログを書くということで、業務時間中にたっぷりと大好きな場所に長居をしてしまいました。
どうぞマニアな世界にお付き合いください。
『古事類苑』は一度魅せられてしまうと、抜け出すことのできない世界が広がっています。
出典資料は『古事記』『日本書紀』に始まり、各年代の公式文書、『源氏物語』『枕草子』等の日本文学、『小右記』等の古記録、江戸時代庶民の読み物である黄表紙に至るまで様々なジャンルの文書が収録されております。
その様々な文書から特定のトピックスを抜出し、年代ごとに掲載しており、和装本は索引・目録を合わせて355冊にも及びます。
(3F参考コーナーにあるのは明治期~昭和5年に発行された洋装版51冊で、現役で使えます!)
データベースが存在しない時代に、編纂に携わった方々の凄まじい労力と深い古書への知識にただただ驚愕します。
トピックスは天部、歳時部、地部、神祇部、帝王部、官位部、封禄部、政治部、法律部、泉貨部、称量部、外交部、兵事部、武技部、方技部、宗教部、文学部、礼式部、楽舞部、人部、姓名部、産業部、服飾部、飲食部、居処部、器用部、遊戯部、動物部、植物部、金石部
の30部門に大きく分かれており、またその中で項目毎に分かれております。
部門の分け方が時代を感じさせますね。
☆使い方は☆
1 心を落ち着け、明治時代の人になった気分で『古事類苑 総目録索引』を開く。
(明治時代の人が編纂したので、「環境問題」「フェミニズム」等、現代人の概念で作成された索引はありません。)
2 あいうえお順に並んだ「古事類苑索引」で索引語の示す①部門②洋装冊数③頁数
をメモする。
3 2の情報を元に、本編を開く。
『古事類苑』ファンの私は断然紙媒体派なのですが、長大IDをお持ちの方はデータベースで学外からも検索できます。
① 図書館のホームページから「データベース」の一覧を開く。
② データベース一覧の一番上、 Japan Knowledgeを開く。
*学外からアクセスの場合はOff-Campusを選んでください。
③詳細(個別)検索 から 古事類苑を選ぶ。
4 明治時代の人の気持ち(?)になり、試しに「猫」と検索してみます。
5 動物部 洋巻1巻の194ページから掲載しているようです。検索結果をクリックすると本文が読めます。
契約の関係でお見せできませんが、検索結果を少しご紹介すると
『更級日記』では、作者のお姉さんが、飼っている猫が実は大臣の娘の生まれ変わりだと言い出した記事
『小右記』(平安期の貴族の日記)では宮中で飼われている猫に子猫が産まれ、乳母がつけられたということを批判的に書いた記事
「義猫」の項では病気で亡くなった主人の後を追って、舌を噛み切った凄まじい忠義猫の記事
「怖猫」の項では強欲で猫嫌いの男が国司に猫をけしかけられて租税を払ったという説話『今昔物語』等々
「猫」に関する古代から近世までの実に51もの古典文学、古記録の記述を読むことができました。
これ一つで論文がいくつも書けそう。(すみません。嘘です。)
論文やレポートを作成する際、その内容について研究した図書や論文を収集することはもちろん大切なことですが、よりプライオリティの高い論文にするには、一次資料から論証していく必要もあるかもしれません。
日本史・国文学分野の資料収集にご活用ください。
*Japan Knowlege では、『古事類苑』の他にも様々な辞典統計等が横断検索できます。ぜひご活用ください。同時アクセス数が限られていますので、使用後はログアウトをお忘れなく。
Y.T